「食・寺院・農園」から考える認知症共生社会 第159回老年学・老年医学公開講座「食べて、祈って、耕して~『食』と『寺院』と『農園』が創る認知症共生社会」

 「食・寺院・農園」から考える認知症共生社会
第159回老年学・老年医学公開講座「食べて、祈って、耕して~『食』と『寺院』と『農園』が創る認知症共生社会」

現在、YouTubeにて配信中の第159回老年学・老年医学公開講座「食べて、祈って、耕して~『食』と『寺院』と『農園』が創る認知症共生社会」(東京都健康長寿医療センター主催)。その興味深い内容を、簡単にご紹介したい。

講演者は東京都健康長寿医療センター研究所の研究員3名。食べること、祈ること、耕すことをキーワードに、認知症共生社会を創るための最新の研究について、わかりやすく伝えてくれる。
枝広あや子氏による「食べてEat:食べて育む生きるチカラ」では、認知症と食の関係について説明。高齢期になると口腔機能が低下し、咀嚼が困難になることがある。しっかりかめず、柔らかいものばかり食べていると低栄養状態になり、栄養不足から鬱や不安症状が現れることも。その結果、認知症リスクも高まるという。栄養をとるためには歯応えのあるものをゆっくりかんで食べることが望ましい。そのためには壮年期以前より、気づいたときから口腔ケアを心がけることが大事とのこと。

岡村毅氏による「祈ってPray:寺院が担う共生のカタチ」では、日本社会にコンビニより多く存在する「寺院」に巨大な潜在資源として着目。お坊さんは奥ゆかしくてあまり喧伝しないが、終末期を支える活動をしている寺院、デイケアを行う寺院、介護者を支える介護者カフェを開催する寺院などが日本各地に点在しているという。それぞれの活動が岡村氏により紹介される。被災地や医療機関、福祉施設などの公共空間で、心のケアを提供する宗教者である「臨床宗教師」の養成も、東北大学をはじめとする複数の大学で始まっている。彼らは布教や伝道をするのでなく、相手の価値観を尊重しながら、宗教者としての経験を生かして、苦悩や悲嘆を抱える方々に寄り添う。

宇良千秋氏による「耕してFarm:農園で育む人とのキズナ」では、認知症ケアの社会的資源として、農園を取り上げる。宇良氏が新潟で60代の認知症患者を対象に行った、稲作ケアプログラムについて紹介していく。上越では若い頃から稲作になじんでいる方が多くいることからプログラムの研究が始まったとのこと。仲間と交流しながら昔の記憶を呼び戻すような農作業を週に1回続けることで、半年後には通常のデイケア参加者と比べ、稲作ケア参加者は精神的健康が高まっていたという。都会でも、例えばトロ舟を使うことで稲作ができるといった実例も紹介される。

食・寺院・農園。それぞれの分野から提案された認知症共生社会への道を、ぜひ視聴して確かめてみては。

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